心臓の病Ⅲ
- 健康の話
- 2016.01.28
前回、前々回と心臓のシステムと主な疾患について述べたので今回は治療という側面について述べたいと思います。
1,心臓の手術
心臓は生まれてからずっと動き続けている臓器であり、それを手術するということは非常に大変なことです。
しかし、近年は技術が進歩しており、以前と比べてかなり安全に心臓の手術を受けられるようになりました。
手術が必要となる主な病気としては、心筋梗塞・狭心症の原因となる冠状動脈(心臓の表面にあって、心臓自体に血液を送る血管)の疾患や、心臓の中の弁の病気(弁膜症、例えば大動脈弁狭窄症や僧房弁閉鎖不全症など)があります。
また、先天性の心臓の病気(心房中隔欠損や心室中隔欠損など)に対しても手術を行います。
それぞれの病気について、手術の方法は異なります。
例えば、冠状動脈の病気では「冠状動脈バイパス手術」、弁膜症では「弁形成術」や「弁置換術」と呼ばれる手術を行いますが、それらの中でも病気になっている部位や範囲によって色々なバリエーションがあります。
一般的な手術の場合、下図の人工心肺装置という機械で心臓と肺の役割を代わってもらい、心臓を心筋保護液という薬で一時的に止めて、その間に手術を行います。
心臓に対する手術が終わったら、止めていた心臓を再び起こして、問題がなければ人工心肺装置を外すという手順になります。
2,人工心臓
人工心臓とは、心臓の機能の代替もしくは補助を行うために用いられる人工臓器です。
国際的に見て、日本の医療機関の承認には制度上諸外国で承認された機器との時間的なラグが生じますが、特に人工心臓では、承認の遅れにより本来ならば助かるはずの患者の生命が失われることもありうるので、学会等でも日本の承認の遅れの問題は大きな問題として取り上げられています。
人工心臓には、患者自身の心臓を摘出して埋め込まれる「全置換型人工心臓」と、患者の心臓を温存して心機能を補助する「補助人工心臓」が存在します。
全置換型は採算や倫理的な面からあまり使用されていないのが現状で主に補助型タイプが臨床面で使われているのが一般的な様です。
他にもロボット支援による低侵襲外科手術であるダヴィンチ手術や僧帽弁手術、心房中隔 閉鎖術、バイパス手術など心臓という臓器に関するオペは日々技術的にどんどんと進歩発展している分野です。
人間の体におけるメインポンプかつ発動源ともいえる心臓を取り巻く環境は今後もどんどんとかたちをかえて我々に関与していくのではないでしょうか。
南千住院 後藤