骨折あれこれ5 ~続発症 コンパートメント症候群~
- 亀有北口本院
- 2016.12.25
今回は骨折続発症のコンパートメント症候群(急性型)についてお話します。
前回の脂肪塞栓症候群の時に名前だけ出しましたが、
これは今までお話ししてきたクラッシュシンドロームや脂肪塞栓症候群と違って、
命に関わる問題に発展することはあまりないです。
しかし、コンパートメント症候群の怖い所は、部位によって重大な後遺症が起きることです。
後遺症の定義は『治療終了後も永続的に障害をのこすもの』となっています。
コンパートメントとは、区画という意味で、
人間の身体は、筋肉・血管・強靭な筋膜・骨間膜・骨などによって囲まれており、
この空間を区画と言います。
コンパートメント症候群とは、骨・筋肉・血管損傷などよりこの区画内の組織内圧が上昇して、
組織の循環不全によって、筋・神経の機能障害が起きた状態を指します。
簡単に言うと、組織が損傷を受けた場所が出血などによって腫れあがる際、
骨・筋膜・など強靭な組織で囲まれた区画のせいで逃げ場がなくなり、
区画内がパンパンに膨張することで周りの組織に多大な影響を及ぼす、という事になります。
影響を受ける組織の中でも特に問題なのが血管・神経です。
血管が膨張した組織によって圧迫を受けることで、
そこから先の血行が遮断され組織が壊死してしまいます。
筋・神経は一度壊死したら再生しません。
そして、肘の骨折によるコンパートメント症候群の中でもとりわけ子供に多いのですが、
一夜で現れて一生変形を残す『フォルクマン拘縮』を高確率で発症します。
※小中学校で、前並えをした時に腕が伸びきらない子がいましたが、おそらくフォルクマン拘縮だったと思います。
このように、命に関わらなくても生活の質(QOL)が著しく低下する恐れがあるのがコンパートメント症候群です。
そのコンパートメント症候群の主症状は、
1、麻痺
2、疼痛
3、感覚異常
4、蒼白
5、拍動消失
となります。
上記に6腫脹・7他動的伸張テストを加えることもあります。
特に発症しやすいのは前腕と下腿部なのですが、
これは、前腕も下腿も二本の骨で構成されている事が原因です。
骨と骨の間には骨間膜という強靭な膜があり、
この骨間膜が区画をより強固にしてしまうからです。
このコンパートメント症候群が起きる原因の一つに
ギプス・包帯のきつ過ぎが挙げられます。
もし医療機関で固定をしてもらった後に、
上記のような症状が急激に起きてきたらすぐに受診した医療機関に相談して下さい。
場合によっては筋膜切開といって手術で組織内圧を下げる以外に組織壊死を止める手段がない事もあるからです。
全ての症例に言えることですが、
放っておけば何とかなるかな?で何とかならないのです。
少しでもおかしいと思ったらすぐにご相談くださいね。
では皆さま、良いお年を!
お怪我などされない事を切に祈っております。
亀有本院 中尾