筋トレは抗っていることになるのか?
- 亀有南口分院
- 2018.09.29
先日、女優の樹木希林さんが亡くなられました。
自分が子供のころには「寺内貫太郎一家」というドラマで
もうすでにおばあちゃん役をされていましたが
年齢を重ねるにつれ『老い』に抗わず
その自然体のままでの演技が印象的でした。
そんな姿を思い返し『老い』について
思いついたことを少しお話したいと思います。
アメリカの心理学者エリクソン,E.H.は
人間の発達を
加齢による生物学的な成熟と衰退のみを基礎にしたものではなく
「人間は誕生から死まで生涯をかけて発達する存在である」
と考えました。
人の出生から子供、大人、老人に至るまでの発達を
包括的に見ていくことを『生涯発達』とし
この生涯発達の観点を明解にした『ライフサイクル理論』
という概念をエリクソンは提唱しました。
ライフサイクル理論で、人の一生は
「乳児期」「幼児期」「児童期」「学童期」
「青年期」「成人期」「壮年期」「老年期」
の8つの発達段階に分類されます。
それぞれの発達段階には
成長や健康に向かうプラスの力(発達課題)と
衰退や病理に向かうネガティブな力(危機)がせめぎ合っており
その両方の関係性が
人の発達に大きく影響していると仮定しています。
乳児期:「基本的信頼 対 不信感」
幼児期:「自律性 対 恥」
児童期:「積極性 対 罪悪感」
学童期:「勤勉性 対 劣等感」
青年期:「同一性獲得 対 同一性拡散」
成人期:「親密性 対 孤立」
壮年期:「生殖性 対 自己停滞」
老年期:「統合性 対 絶望」
各発達段階ごとに
「(発達課題)対(危機)」が対になって設定されています。
これは、どちらか一方しか獲得できないわけではありません。
危機を抱えながらもそれを克服し
発達課題を身につけていくような
経験を積み重ねていくことが大切ということになります。
( 発達課題は後に獲得することも可能です )
各発達段階には発達課題と危機がありますが
ここで老年期を例えに上げると
老年期は子育てが終わり、退職して余生を過ごす時期であり
身体の老化と直面し、死と向き合うことになる時期です。
発達課題は「統合性 対 絶望」です。
統合性とは
老年期までの各発達段階で獲得してきたものを振り返り
自分の人生をポジティブに受け入れて統合することです。
統合性を獲得することで気持ちや情緒が安定し
円滑な人間関係が築けたり
趣味・ライフワークを心から楽しむことができるようになります。
しかし
自分の人生を受け入れられないままだと
人生を後悔したり、新たな自分を探し求めることになり
身体の老化や時間の無さに不安や焦りが募り
絶望感を感じてしまうのです。
晩年、闘病生活を感じさせず
自然体で女優を貫いた姿は素敵でした。
心からお悔やみ申し上げます。
南口院 いたばし